2008/02/10

ナツメグの味

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)
ジョン・コリア 垂野 創一郎
河出書房新社 (2007/11)
売り上げランキング: 73082

■ジョン・コリア
たまにはライトなミステリーを読みたくなって初ジョン・コリア。「異色短篇作家」ということで、最初の3行を読んでみたらすんなり入れそうだったので購入した。
ひとことで言うと、個人的に懐かしかった。二十代の始め頃だったと思うがブラック・ユーモアとか「奇妙な味の短篇集」とかにハマってそういうものばかり読んでいた時期があったのだが、この作家の作品はまさにそういうもので。

一般に日本人はブラック・ジョークがウケないというか、真面目に眉を顰められてしまうことが多いと当時読んだ本の解説にどなたかが書いておられた。従ってその手の話が苦手・嫌いだという方に本書はすすめられない。しかしたまには唐辛子が食べたいね、という方にはちょっとした刺激にはなるだろう。ただ、私はどうせ唐辛子をすすめるならもっと美味しくて気の利いたそれを知っているのでそちらを推すなあ、と本書を最後まで読んで思ったのも確か。
ロアルド・ダールのほうが面白いかな。スマートだし。
また、ブラック・ユーモアではないがアイザック・アシモフやサキの切れ味のほうがすかっとする。

なんつうかね。
すごく面白いのもあるんだけれどヌルいんだ、全体的に、落とし方が。
すいすい読めるし面白くないわけじゃないんだけれども、このへん斬ってきたらゾゾッとするだろうなあ、という読書中の想像を越えないものが多い。あと、ラストまで読んでもいまいちピリリ感がなくていったいどこに力点を置けばよかったんだと戸惑うものもあって。玉石混淆っていうとそこまで極端じゃないんだけど……。
1901年生まれの作家でこのジャンルの先駆けらしい。20世紀初頭の作家が書いたと考えるといまだに色褪せないのは凄いと思う。

本書には17ものいろんなお話が書かれている、ブラック・ジョークはすっと聞いて一瞬くすっとしてさらりと流すのが良い。
私が特に面白かったものを下記に、ネタに触れないようにさらっと。
「異説アメリカの悲劇」
このスラップ・スティック。最高だ。映像的にリアルに想像しすぎちゃ興醒めだから、あくまで喜劇として読むのがおすすめ。翻訳の文体もノリノリなのが楽しい。
「猛禽」
良い!この切れ味、たまんない。後味もじわっとくる、余韻があるねえ。
「頼みの綱」
インド奇術をこう料理するとはね。面白い。綱の上の景色を是非見たい。不思議で、夢(?)があって、ブラックだ。
「地獄行き途中下車」
悪魔や死神に対してこういうふうに振舞う人間の話が好きなので。痛快だね。エスカレータの描写も好き。