2007/11/29

つくもがみ貸します

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posted with amazlet on 07.11.28
畠中 恵
角川書店 (2007/09)
売り上げランキング: 1402

■畠中恵
最初表紙をちらっと見かけたときに「あ、また”しゃばけ”シリーズの新作が出たのね」と”畠中恵は文庫派”の私は思ったのだけれど、最近このお話がけっこう売れている、という情報を目にし、その折にこれは”しゃばけ”シリーズでは無く、古道具屋さんの話だというのも知った。
そうか古道具かあ。しかもそれが「付喪神」なのかあ。それでこの著者であるから話の大筋や雰囲気はほぼ想像ができる。で、珍しく単行本で読んでみた。私が手にしたのは再版だったが店によっては既に第3刷が出回っている。

深川の古道具屋兼損料屋を営んでいるまだ若い姉弟がいて、この出雲屋には百年を経て「付喪神」というまあ妖怪変化の一種と化したモノたちがいくつも集まっている。姉弟たちはその存在を知っているし彼らの話していることも聞いているのだけれど、付喪神たちは”線引きをしておかなくては”ということで人間とは口を利かない、というルールを守っている。
「損料屋」というのは現代では馴染みがないが本書は連作短篇集でありその5つの話の冒頭でいちいちその説明が繰り返されるのでここでは控えておこう{短篇はそれぞれ雑誌に掲載されたのだから仕方が無いと思うけど単行本にまとめる際に割愛するとかの手を入れてくれても良かったんじゃないかなぁ、なんせ5回も懇切丁寧に舞台状況が説明されるもんでそれを繰り返し読むのはいささかクドさを感じた(そりゃ一応書き方は変えて工夫してくれてあったけど)}。

姉はお紅、弟は清次という名だがちょっと読んでいくと実はこのふたりは姉弟ではなくて親戚だ、ということがわかる。で、清次はお紅が好きなんだけど、お紅にはずっと心の隅で気になっているひとがいるようで……。
彼らの淡い恋の行方、若いオンナゴコロの揺れ動き。また、肝心の「蘇芳」は最初は謎でどういうひとかというのは徐々にわかってくるのだが、伝聞から描いたイメージと実際出てきたキャラがだいぶ乖離していてがっかりしたのは私だけだろうか。……あんまり書くとネタバレになっちゃうから控えるけど、うーん、やっぱり男は謎のままが良いということね(違)。でも男性にはこういう傾向がよくあるみたいだ。女の方が切り替えがクールでしっかりしてるっていうね。

のんびり、あまり難いことを考えずさらりと読むには手頃な本。基本的な空気は”しゃばけ”と似ている。ひとならざるモノたちが今日もわあわあとかしましく、とても「神」の名の付くモノたちとは思えない無邪気さ・勝手気ままさがユーモラス。
ただ、せっかく古道具がいっぱい出てくるのだからもう少しそのへんの萌えをくすぐってくれる描写があったならなあという気がする。名前だけでその詳しいことが全然書かれていない付喪神さんがたくさん出てきたので、これは続篇があるのかな。

もうちょっと、もう少しだけ深く踏み込んだり人の心を揺らめかす何かがあればぐっと良くなるのになあ。なんっか全体に浅かったり意図がみえみえで興醒めだったりするのだ。
惜しいように思う。