2007/09/30

心の砕ける音

心の砕ける音
心の砕ける音
posted with amazlet on 07.09.29
トマス・H. クック Thomas H. Cook 村松 潔
文藝春秋 (2001/09)
売り上げランキング: 170901

■トマス・H・クック
……いやあ、騙された。見事に。
感動した。
まさか、クックでこういう前向きな感動をもらえるとは思ってなかっただけに唖然としながらもうち震えた……。素晴らしい!

予断もあったのだすな、2作読んだだけだけど作品の傾向は同じだったから「クックはこういう作家だ」という安易な思い込みでもって。
だから終盤の背負い投げに「お? おおっ」とびっくりし、ミステリーで騙される快感にうほうほしながらも「で、あれ、じゃあ、どうすんの?」と思っていたら続く展開が……これはもう……! っていう、感激の津波どどどどん、というモノで。

素晴らしかった。

終盤までの物語に流れる空気は『緋色』とかと同じ。
悲劇があった、ということが明示され、それに沈鬱な表情をした主人公が向き合い、真実を追究するために動いていくというパターンだ。
だから終盤の展開は予想しなかったし、別にそういうの望んでクックを読んでいなかったし、……それ故に余計、胸に迫るものがあったというか。

これはクック初心者の私だけの驚きではなかったようで、解説の中嶋博行氏の言を引かせていただくと、【『心の砕ける音』はこれまでの作品とは微妙に異なっている。従来、「幸せになってほしい人が、だれも幸せにならない」というのがクックの小説の特徴で】あったが、【本書は違う。】ということだ。そうなのだ。

若く美しい女1人に、若い男2人。
――とくれば大体予想できる展開からはじまったロマンス、そして悲劇。

正直中盤などはありがちなストーリーに「これ、クックの文章だからこそ読めるけど……」などと不遜な考えが浮かんだりもしたものだ。
だがその悲劇の末に待っている結末は今までの展開を予想もしなかった大きさで包み込み覆し、人間のもつあらゆる可能性への希望の光を感じさせてくれるものだった。

同じような言葉ばっかり並べてしまう、ああ誉めるのに語彙が足りない己がもどかしい!