2007/09/02

冷たい校舎の時は止まる

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)
冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)
辻村 深月
講談社 (2007/08/11)
売り上げランキング: 14758

■辻村深月
正しくは「辻」のしんにょうの点は2つで綾辻行人と同じだそうで、何故ならば辻村さんは綾辻さんの大ファンだからだそうだ。読後調べたらウィキペディアに書いてあった。おーそうなのか。
私はまた森博嗣のファンなのかな、とか読みはじめてすぐに思っちゃった。だって主人公の名前が「辻村深月」と著者のペンネームと同姓同名で、主人公のボーイフレンドの名前が「鷹野博嗣」なんだもの。で、森先生ってメフィスト賞第1回受賞者だし、この作品はメフィスト賞に応募して第31回の受賞作となったものだし。そっかー、深読みかあ。

さてこの作品はノベルスで出た折にしゃむさんが絶賛されていたのでずーっと気になっていたものが文庫化したもの。ノベルスのとき上中下の3冊だったもんでいささかひるんでいたのが文庫だと上下2冊。まあしっかり分厚いのは同じだからちょっと勇気がいったが。
途中で放棄するかもとまず上巻だけ買って読んでみた。
・・・これ上巻最後まで読んで下巻読まずに止められる、ってひとはまずいないんじゃないだろうか。

雪の中に閉じ込められた校舎。
そこに生徒が8人。
……帯をみてうーん密室モノに典型な設定だな、と思ったが実際に読んでいくとびっくり、だって外からは入れるけど中からはドアも窓もびくともせず動かない、従って出られない、携帯も何故か圏外で、固定電話も不通になっている、というんだから。

どんな合理的な説明が付くんだろうか? オカルトなのか? オカルトはあんまり好きじゃないんだよなあ、と危ぶんでいたのだが大丈夫でした、(私には)ちゃんと飲み込める説明が付いていて。まあ精神的な不思議な現象なので、そういう世界は絶対に受け付けない、という方は上巻の途中で読むの止めちゃうと思うけれども。

テーマは「受験」あるいは「受験生」。あの独特の空気がこの小説の底にずうっと流れている。

登場人物は進学校の私立の高校3年生で、出てくる子達みんなそれなりにお勉強の出来る子ばかりで、そりゃそれぞれタイプは違うんだけれども全員のつながりが「クラス委員を務めた仲間」なんだから基本的に優等生。
だから常識では考えられない異常な状況の中でも不必要に暴れたり騒いだりしないで、お行儀良く理性的に状況に対処しようと努力していく。中には時間が進まないのを好都合と解釈して赤本と取り組む猛者もいる。そしてそれを揶揄しない大人な対応の出来るメンバーでもある。この閉じ込められた8人全員が仲良しで、気が合う仲間意識の強い連中だった、ってのも良かったんだろうな。

この「閉じ込められ」事件の2ヶ月前、彼らのクラスメートが校舎から飛び降り自殺した。学園祭の最終日、みんながお祭り騒ぎで楽しんでいる中、死んでしまった。

ところが何故か「閉じ込められた」彼らはその自殺したクラスメートの名前も顔も、それどころか性別すら思い出せない。思い出せないように記憶を封じられている。

自殺したのは誰だったのか?
どうして彼らを選んで閉じ込めてしまったのか?
そしてその目的は?

常にアタマの中の最優先事項の中に「受験」があった日々。

私はもうだーいぶ遠い昔のことになってしまったので(苦笑)、ああもうちょっと勉強しとけばよかったなあ、この話に出てくる子達って偉いなあ、とか思いながら読んでいたのだが、リアルに高校生の受験生の皆さんなんかが読むと結構プレッシャーになるのかな、それとも励みになるのかな。

誰かを好きになったり嫌いになったり、嫌いになった相手を時には故意に傷つけてしまうことも人間だからあると思う、でも相手がそれで死んじゃったら。「まさか死ぬとは思わなかった」と皆が言う、でもどれくらいの苦しさを抱えているかなんてそのひとにしかわからないし、どれくらいの苦しさを越えてしまったらそのひとが壊れてしまうかなんてきっと本人にすらわからない。

8人のそれぞれがそれぞれのいろんなことを抱えて生きている。そしてそれが結構悲しいことつらいことだったりする。
そういうのが書いてあるので章がはじまるとああ今度の子はいったいどんな苦しみがあるんだろうか、と予期して悲しくなりながら読んでしまう。

こういう悲しいピースの集合体の待つ結末がバッド・エンドだったら無茶苦茶救いがないなあ、作者恨むぞ、と思っていたけど大丈夫、それぞれに力強さを感じさせてくれる形でした。

一方的な視点で生きていくことは時にものすごく残酷な結末を生む、だから出来れば時々は第三者の視点を持てることが大切なんだな、と思ったけど18歳やそこらでそういうのってものすごく難しい……いや今でも全然出来てないと思うし。

これがデビュー作で、同姓同名のキャラ作っちゃったわけだけど、彼女は今後の作品にも出てくるのかなあ?