2005/12/13

砂漠

4408534846砂漠
伊坂 幸太郎

実業之日本社 2005-12-10
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■伊坂幸太郎
昨日夜70頁ばかり読んだ伊坂幸太郎の最新書き下ろし長編『砂漠』、本日続きを読んで了。表紙の絵がヘンチクリンです。好みじゃないです。正直、この表紙には購買意欲をかなり殺がれた。胃逆様の新刊じゃなければスルーするところだ。どんなもんじゃろうのう、単行本担当編集者氏よ。

そんでまぁ読み始めてみたらあの『魔王』みたいな眉根を寄せたくなる小説ではなかったものの、これはこれで今までの『アヒ鴨』とか『チルドレン』とはまた全然雰囲気の違う作り方のおハナシで「うーん、いったい胃逆様はどっちに向かって走りたいんだらう?」と首を傾げたくなる程度には変化球であって、ちっと毒気もあるなと。しかしまあ今回の作者は読者に背を向けている感じではないのでこれはダラダラ読まずに集中して読んじまおう、と。

そんなわけで最初は戸惑いつつ読んでいったわけだが「春」の章を終わる頃には結構この世界にも慣れてきた。『魔王』では意識的に排除されていた「サプライズ」もこの作品では用意してくれてあったし、かなり楽しみつつ読み進むことが出来た。「冬」などは久々に「イヨッ!待ってましたっ」的コーフン箇所もあり、かなりゆるやかな勾配ではあるものの感動の山が築かれていて、結果的に「ちょっと『魔王』引き摺ってるかもだけど、面白かったな」と。

相変わらずキャラ作りの巧さは健在だ。
表紙のイラストは多分西嶋だと思う、西嶋は惹かれますよ著者の思う壺だろうけどね!どっか「陣内」系ですよね彼は。陣内君と西嶋君を会わせたいですよ。お互い自己主張譲らないだろうし、さぞや面白いだろうなあ……。主人公が「鳥瞰図」な性格なのは胃逆様らしいし、南ちゃんは可愛いし、東堂さんはミステリアスで『重力ピエロ』の夏子さんをちょっとだけ思い出した。最初は「なんだこいつ」と少し反感を抱いた鳥井にも段々好感を持ち、ハナシが終盤に至る頃には主人公と一緒になって「えらいな、」と思うようになっているし。
……っていうか今読み返して自覚したけど「~ですよ」と畳み掛けるようなこの口調は西嶋君だよ……ヤバイ、うつってる(^^;。

それにしてもこの作家は何を目指してるんでしょうか?売れたあの系列を否定したいわけ?「なんてことは、まるでない」の使い方はケンカ売ってんのか(笑)?って感じだけど(^^;。これはあれでしょ、太宰治の『トカトントン』でしょ、どっかで第三者的に「感激」を醒めた目で見るっていう。
でもベストテン考えてて気付いたんだけど、私が胃逆様読んだのって全部「今年」なんだよなあ。まだ私の中で醸成されるには期間が短すぎるっていうか。でもそんな初心者だからなのかも知れないが、ここ数作品の変化が気になってしまうのだ。引用の巧みさだとか、共通点もいっぱいあるんだけど。この作品でのサン・テグジュペリはもちろん、『魔王』ですら宮沢賢治の引用してたしね。
ウーム……。

(そういや今月の「本の雑誌」で池上冬樹が『魔王』を絶賛していた。あ、そーくる……)。