2003/08/30

ゼウスガーデン衰亡史

ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫)
小林 恭二
角川春樹事務所
売り上げランキング:
■小林恭二
これは一つの遊技場がどういうふうにその勢力を広げ、中でどのような勢力が分裂し、対抗し、確執が起き、軋轢を繰り返し、出し抜き出し抜かれ、その中でどのようなアトラクションが生まれていったか――を、かなり前衛的(当時としては。今はもう古いんじゃないだろうか)な文体で描いた近未来SFです。まあ文章が多少羅列を意識的に多くしてあるとか、筒井康隆の足元にも及ばないんですけど。これはこれで良いです。この小説を読んでいると「おもしろいなあ」と思いつつも、同時に「筒井康隆が既にやってることじゃないか、それもかなりハイレベルで。ああ、筒井康隆ってやっぱり凄い存在だったんだなあ、鬼才・天才ってああいうのを云うんだなあ」と他の作家の凄さを再認識させるという(笑)、不思議な小説でもありました。別にこれが模倣だとか云ってるんじゃないんですよ。これはこれでオリジナルですから、勿論。

まあわかりやすく云ってみれば、ディズニー・ランドがすごく勢力を広げ、そのうちに日本中の遊技場を吸収合併していき、世界中からそれを目当てに人間がやって来、当然お金の流れもそこに集まり、果ては治外法権まで獲得し、つまりは最初は単なる遊技場だったものが一種の国家となって、そしてそれがやがて滅びていく、というようなハナシなのです。これが書かれたのは1987年で、小説の中では90年代~2075年くらいが舞台です。世の中は非常な好景気で、快楽至上主義というのが盛り上がっていきます。このへん、バブル崩壊後の現在を生活していると苦笑するしかありませんが、まあこれは近未来SFの宿命ですね。

ちなみにこの小説、ある種の毒があるというか、かなりきわどい差別表現・タブーが頻出しますので、精錬潔白な方はご注意ください。出てくるアトラクションがほんとに愉しかったです。