2003/07/25

香水―ある人殺しの物語

香水―ある人殺しの物語
パトリック ジュースキント Patrick S¨uskind 池内 紀
文芸春秋 2003-06


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■パトリック・ジュースキント
冒頭のこれでもか、というエグイ描写にのけぞりつつなんとか越えるとそこからは結構面白くなっていく。嗅覚が異常に優れている(天才と文中では評される)ある男の一生を描いてあるようだ。とりあえず「香水」という優雅で美しく上品なイメージからは程遠い作品。お腹一杯のとき、食事前後などには向かないだろう。「匂い」というより「臭い」の描写が意図的に克明に書かれている。主人公の描写だってこれでもかと醜悪なものだ。香水に男が絡みだした頃から話が俄然面白くなってくる。

中盤が一番面白かったと思う。洞窟での生活、人間界でいかにして立場を得ていったか、というのが。そもそもこの犯罪の動機にはいささか疑問を覚えるし、(以下ネタバレは白文字)。〔そんな一瞬のことのために得難い相手を殺すなんてどうして無謀なことをするのか。立場的に結婚が無理なら拉致して監禁が主人公にとっては望ましい筈だろ〕とか突っ込みつつもまあ、単純に考えるとこういう行動がてっとりばやいのかなあと思いつつ読んでいく。(念のために書き添えますけど犯罪をオッケーとしてるわけでは断じて、決して、ナイですよ!単純に小説のスジとしてのみ申しております)。それにしてもラストの展開には「ウーム」。あり得るのか?〔時代的にそんなタブーじゃないのか?その前の乱痴気騒ぎもどうなんだろう。〕とりあえず吉野さんじゃないけど「終わった終わった」という感じの読了感。いろいろツッコミたい作品であった。これ、当時ドイツではベストセラーになった作品で、13年前に日本でも単行本化されていたものだそうです。こういう内容がベストセラー。。。ううむ。
まあ、東洋人にくらべて西洋人は体臭がキツいから香水文化も発達してますしね。それにしても文庫化に時間がかかってるなあ~。文庫版訳者あとがきから察するに、翻訳者が留保してたのかも知れない(ちなみに池内紀だって。このひと、自作の本も結構出てますね)。