2003/06/07

安政五年の大脱走

安政五年の大脱走安政五年の大脱走
五十嵐 貴久

幻冬舎 2003-04
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■五十嵐貴久
今月の本の雑誌の書評を見てから気になって、しかし単行本だというので「3年待つべきか?」とここんとこずっと迷っていた五十嵐貴久『安政五年の大脱走』やっぱり読もう!とゲット。あの歴史上の大人物、井伊直弼が恋をして、叶わぬ恋にどうのこうの、という内容だというので「な、なんだそれは」とめちゃくちゃ気になったんである。

最初に出てきた井伊直弼は元服前の15歳の少年で、年上のとっても綺麗なお姫様に一目惚れする。このときの直弼の境遇がかなり辛いというか貧乏というか精神的にも苦しいもので、「あの井伊直弼はこんな苦労した人だったんか」と初めて知りました。で、この若者のまま苦しい生活と苦しい恋を描いていくのかな、と思って読んでいたらなんと次の章でいきなり44歳になっている。ええっ、と思ったけどそこはそれ、前章の内容が活きているんである。

面白かった!
特にラストちょっと前あたりの展開が!天晴れ!という感じ(これ以上書くとネタばれになるので我慢)。これ、井伊直弼が出てくるってんで、歴史モノと思って読まないほうがいいです。むしろ歴史は関係ないと言ってもいいかも。というか、井伊直弼じゃなくても成立し得る話なんでは。時代が合えば。

それにしても、大作戦の描写とか、緻密に書いてあって手に汗握る。この展開の妙は時代小説ファンよりむしろミステリーファンに受けるのではないだろうか。唯一難癖をつけるとすればお姫様の言動の裏付けをもう少しじっくり読みたかった。ラストのほのめかしには思わずにんまり。爽やかで気持ちのいい読後感である。