2003/06/21

無人島に生きる十六人

無人島に生きる十六人
須川 邦彦
新潮社 2003-06


by G-Tools

■須川邦彦
単行本出版が昭和23年というだけあって、独特の構成の古さなどがちょっと読み慣れないけど、おすすめ。
予想していたようなガッツと根性で頑張ろう!ってレベルじゃなくて、まるで修身のお手本に載っているかのような立派な姿勢に思わず背筋を伸ばしてしまいました。それでいて、軍隊とかみたいじゃなくて、すごく陽気で、明るいの。明治の日本で本当にあった遭難事故の記録らしいんですけど、ううん、すごいなあ、日本人て、立派だったんだなあ(まあ美化はあるだろうけどさ)。

この内容の素晴らしさ、中学生くらいに薦めて誇りとしてもらいたいなあ、と考えたくらい。あまりにも立派過ぎて「どこまでホントーなんだろうか」とは首をかしげたけど。解説の椎名誠さんも、これは「創作」なのか、と思ったそうで、知り合いの編集さんとかが調べたりして、まあいろいろの資料から「実際にあったことだ」ということは確か、となったらしい。ふーん。

すごく印象に残った台詞が本の前半に出てきて、この本がどういう雰囲気かもそれで掴んでもらえると思うので、引用したい。これは、この船が遭難して、いつ終わるとも知れない、不安な無人島暮らしが始まるにあたり、船長が船の幹部だけを呼んで他の若い人たちをどういうふうに導いていくか、話し合いの場をもつシーンである。船長の意見を聞いての運転士の返事に、私はかなりショックを受けた。

 「-(前略)- これから私は、塾の監督になったつもりで、しっかりやります。島でかめや魚をたべて、ただ生きていたというだけでは、アザラシと、たいしたちがいはありません。島にいるあいだ、おたがいに、日本人として、りっぱに生きて、他日お国のためになるように、うんと勉強しましょう」

ちょっとナショナリズムが強くて、「戦時下の情操教育?」という疑いがちらりと脳裏をかすめたが、何、これの出版は昭和23年であります。

それにしてもこれまで無人島漂流、というと「どうやって生き延びたか」という話とばかり思い込んでいたのが……スパーンって横っ面はたかれたみたいな感じでした。衣食足りて礼節を知る、ってのは甘ちゃんの戯言でしかないのでしょうね……。この本の記録にははっきり言って長所ばっかりしか書いていないんで、さっきからくどく書いているようにかなりの「美化」があるんだと思う。んでもね、やっぱこの台詞はちょっとやそっとでは出てきませんよー。まったくの偽善だったら書けませんよ。やはり、実際に、彼らの精神がこういうものだったから、こういう台詞があるんでしょう。明治のこの精神、いまいちど、頭に叩き込みたく、思った次第でありました。