2003/02/08

走るジイサン

走るジイサン
池永 陽
集英社 2003-01


by G-Tools

■池永陽
老人の頭の上に猿が乗っているというハナシ、という前知識があったので、シュールな世界を想像して読み始めたのだが、あにはからんや。これは、老人の性とかそういうのとまともに取り組んだ赤裸々な?小説だったんである。フーン、そうかと思うけど読んでいて面白いとかいうことはない。どっちかというとあんまり愉快ではない。前半、「なんだこのハナシは。救いがないというか……老人には受けるだろうけど」とか思っていた。

ところが後半、100ページを越したあたり、京子さんが主人公にある打ち明け話をする辺りから俄然、ハナシが締まってきて面白くなってきた。ストーリーに展開があったからというだけではなく、なんだか、今までの一層だけだったものは何層にも重なったものになってきたんである。正光夫婦の話、明ちゃんの話も展開を見せる。まさに、コツコツ積み上げてきたドミノがどわーっっと絵を描いていくごとく、後半は波が押し寄せる。面白い。ラストの展開は、これはちょっとここだけ異質という気がしないでもないが、全体をきれいにまとめたとも思える。『コンビニ』でハナについたような描写もここでは特になかったし。

解説の吉田伸子さん(「本の雑誌」でお馴染み)は、最初に読んだときは猿のことに意識をとられて、再読して……ということを書かれていたが、私は何故か最初から猿のことは気にならなかった。と、云うよりもむしろ「もっと猿のことを書いて欲しい」と思ったくらいだった。変なハナシ、というのを期待してしまっていたからだろう(笑)。このハナシ、結婚直前で舅と同居が決まっている、という人は読まない方がいいのかなあ、とちょっとだけ思った。あるいは、まったく逆かな?