2003/01/10

東電OL殺人事件

東電OL殺人事件東電OL殺人事件
佐野 真一

新潮社 2003-08
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■佐野眞一
これはまだ記憶に新しい、平成9年に起きた実際の事件を追究しようとするノンフィクション・ルポタージュです。というと社会的な興味、あるいは同じOLとしての関心で読むのかと思われそうですが、別にそういうことはないんでした。そうだったら単行本の時に読んでるハズで。「何故この本がそんなに評判になったんだろう」というちょっとナナメ視線で読んでみようと思います。――さて読了後、私の感想はどうなるでしょうね?絶賛してたら著者の勝ち(笑)。それにしても年度調べるためにこのタイトルでネットぐぐったらどっひゃー( ̄□ ̄;)!!という感じの検索結果が……。「ああそうかそうか、そーゆー扱われ方してんのか……」なんつーか一抹の空しさが。嗚呼無情?

読了。
うーん、なんていうか、期待していた方向と違うなあ……。もっと件の女性の精神・内面的なものを追っていくものと思っていたら、事件の起きた土地周辺を歩き回って周囲の人に話を聞いたり、容疑者とされた男性に面会に行ったり、故郷まで行って家族に「無罪を信じてます」とか云ったり、そういうの中心なんですね。しかもこのひと「あんたそれ幻聴やん」「幻影みてるやん」「予断持ちすぎ?」「なんで必要以上に検察側の人間の言動を醜悪に書こう書こうとすんの?」――とまあ、読んでいて思わずツッコミたくなる人で。そのうちに被害者の女性を「巫女」だとか言い出すに及んでは「オイオイ!?」。その後のその「根拠」と云う著述読んでも「どこがどう根拠やねん!?」という。感情移入しすぎ!っていうか思い込み強すぎっていうかオマエは思春期の少女か!!ハナシ作るな!!という感じなんです。まあ好き嫌いですけどね、あたしこの書き手嫌いだー(笑)。

早い話、もうちょっと冷静な視点を望んでいたのに、すごく感情込めてて私的なんです。ルポって書き手に同調できるかどうかも大切なんだなあ、とあらためてしみじみと思いました。特にこういう事件だと、どういうスタンスの著者か、ってのは大きいんじゃないかなあ、と。最後の方にやっと女性の内面に近付こうとする章があってそこは割と興味深く読んだ、というかそれを読んだらそれ以前の女性に対する調べた内容で「?」と思っていたことがちょっと分かったかも。この著者はこの女性を坂口安吾の『堕落論』にひたすらなぞらえたがっていましたが、そうじゃなくてこの女性は精神的に通常じゃなくなっていたって理解した方が私はよく飲み込めるけどなあ。うーん。それにしても茶碗の洗い方も知らない39歳というのは男とか女とか以前に、大人の一般常識としてどうなんだろう……とかなり衝撃的でした。いろんな人間がいるものだ。

それにしてもこの著書を誰がいったい大絶賛してたんだろう、と「本の雑誌」バックナンバーを読み返してみたんですが、アレ!?――結論から言うと「誰も大絶賛なんかしていない」のでした。というか「絶賛」すらしていなかった( ̄□ ̄;)。ノンフィクションを得意とされる東えりかさんが「事件」そのものへの興味を語って取り上げてらっしゃるくらいで。……つまり私の勘違いというか、間違って思い込んでインプットされてたんですね。ウーム、そうかそうだったか……。しかしネットでぐぐったらこの著作に好意的な意見をいくつもいくつも見つけたし、評価の高い本らしいので、私の感想がむしろ異端なのでしょう。まあなんにせよ、いろんな意味で現代社会の異常性が浮き彫りになっている作品だと思います。