2002/10/05

名探偵は密航中

名探偵は密航中
若竹 七海
光文社 2003-03-12


by G-Tools

■若竹七海
これはひとつの航海中に船の中で起きた複数の事件を描いたオムニバス形式。時代は昭和初期。横浜から倫敦に向かう大型客船が舞台です。ロマンチックな設定ですね~。でも観光的な描写はほとんどありません。船の専門的な描写もなし。つまりまあ、ある意味「本格」ですね。事件についての描写がほとんどです。
しかしこれは「本格」とはちょっと言い切れない、何故なら探偵が存在しないからです。まあ、事件はそれぞれ起こるし誰かによって解決はされるわけなんですけど、本格のようなクッキリした形での謎解きは行われないし、犯人が周囲に知れないまま終結したりもする。

また、著者が若竹さんということで、登場人物のおかしさというかほんわか感はこの作品でも楽しめます。口やかましい老嬢(?)に、美人で賢いけどじゃじゃ馬なお嬢様に、酒豪の若き青年。いたずらっ子に、ドジなようで怜悧な召使いに、猫好きのマダム、そして猫ちゃん。。。

ワタシ的には初子お嬢様がいっとうお気に入りでした。特に初子さんが脱走を試みて失敗し、女中に語る「もし脱走できていたらば可能だったわたくしの人生」の奇想天外ぶりな会話は最高です(笑)。お、お嬢様、本気でいらっしゃいますか!?(^_^;)って感じ。イヤ、聡い初子様のことですから、これは女中を説得するための演技、とも読めるんですけどね。

若竹カラー満載で楽しめたのですけれど、やや難をつけるとすれば最終話とエピローグで書かれるある二人の関係の発展の仕方に伏線が少なすぎるような……?「え!?いつのまにそこまで進んでたんだ?」とちょっとたじろいでしまいました。ってゆーか、そこに至るまでの経過をもっと読みたかったな~、というのが本音。まあそれはこの小説の主題じゃないから仕方ないか。
それにしてもタイトルに「名探偵」ってあるけど、それって誰のこと???(笑)。