2002/09/24

家蝿とカナリア

家蝿とカナリア (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ
東京創元社
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■ヘレン・マクロイ 翻訳;深町眞理子
これは原書は1942年に出版されてるんだけど、翻訳初版は2002年、最近っす。
小さい書店の棚ざしにあって、「あまり聞いたことないタイトルだけど、こんな小さい店にあえて置いてあるんだから書店員さんのなんらかの意思があるにちがいない」と思って手に取ってウラのアラスジを読んだらすっかり興味をかき立てられてしまったのだ。「さる刃物研磨店に夜盗が押し入ったが、賊はなにも盗まず、かわりに鳥籠をあけて、カナリアを開放していった」んですって?まあまあ、なーんてドラマチックなんでしょう!センス・オブ・ミステリを刺激しまくる出だしじゃありませんか。翻訳者をみたら深町眞理子女史、ああこりゃ、マチガイナイ、と購入に至った。

この作品は精神分析学者ベイジル・ウィリング博士シリーズのひとつであるらしい。しかし、マクロイ作品自体が日本ではあんまり訳されていないようですな。
1942年に書かれたということで、ドイツ人の登場人物に対して差別的と思われるくらい批判的な書き方をされているのが御時世、という感じかなあ。他人に対して思いやりがない、とか、それをドイツ国民一般にあてはめてたりね。ここまでロコツなのって珍しい。
容疑者は3人、途中で1人増えて4人。なんせ、殺人が上演中の舞台で行われたのだ。被害者に近付く機会があった人間が非常に限られているのである。でも逆に、アリバイとか目撃者とかによって犯人を絞る普通の捜査では埒があかない。じゃあ、何によってベイジルは犯人を特定しようとするか、それはお得意の人間の心理に対する考察であった……!

と言っても予期したような心理テストとかはほぼ出てこない。普通のミステリのように色んなヒトに話を聞いたりして、考えていくわけである。本格モノです。それぞれの人物も良い味出してるし、展開も面白いし、よい小説だ。マイナス点としては肝心カナメの解決部を読んでちょっと首をかしげるトコロがあったのだけど、でもまあ、そこまでカタいことは言うまい。全体としておもしろかったんだから。
翻訳タイトルがうまい!です。原題は"CUE FOR MURDER"。