2002/09/22

海辺のカフカ

海辺のカフカ〈上〉
村上 春樹
新潮社 2002-09-12


by G-Tools

■村上春樹
【1日目】
村上春樹の話題の最新作を読み始めました。これは上下巻あります。売れているそうです。ふーん、さすが村上春樹。あいかわらずタイトルがうまいなあ。耳に残るし、どんな内容かと想像を広げさせてくれる。
今、上巻の半分くらいです。
ちょっと不思議な感じ、いくつもの事象が順繰りの章で描かれていってますけど、これがどう繋がるのかな、と考えつつ。
しかし「世界の終わりと……」を彷彿とさせるという前宣伝でしたが、やっぱり、あの頃の野生の動物のような焦燥感は感じられませんね。これを成熟と捉えるか、退廃と捉えるかは意見の分かれるところでしょうが。

ところで「カフカ」といえばフランツ・カフカ。好きでしたね~、学生んとき、すんごくハマったものです。特に、短篇が良くて。そしたら『海辺のカフカ』の中で登場人物の少年(これが田村カフカって名乗ってるんですけど)が一番好きなのは「流刑地にて」という話をするんです、私もこれがものすごくお気に入りでして、何回読んだことか……。思わず、得たり、と笑ってしまいました。
○ 戦時中の疎開地での子供たちの集団記憶喪失?みたいな事件。
○ 田村カフカ君の記憶の問題と家出の顛末。
○ 猫語が理解できるけれど人間の言葉は読めないし書けない、ナカタ老人。
……今のところの三本柱はこんなかんじです。それぞれがリンクしているようです。
【2日目】
上読了、下を眠るギリギリまで読んで1/3弱というところ。3つの次元が重なりつつあります。しかしこれは最後に犯人が解かって終わることが約束されているミステリと違い、純文学であり、しかも著者が村上春樹なので、どのようなラストなのかは解かりません、どれだけのことが明確な解答を得るのでしょうか(笑)。とりあえず、読み進むにつれて面白くなっていっているようです。

ジョニー・ウォーカーの格好をし、そう名乗る謎の人物が出てきまして、この人は猫を狩って腹を裂き、心臓を生で喰らい、頭を切り落として冷凍庫に集めています。猫の魂を集めることによって特別な笛を作るのだそうです。……限りなく、「村上春樹」を感じさせる存在と行動。別に残酷さがどう、というのではなく、このギリギリのところで狂気に踏み込みそうな存在が、です。読んでいて非常に苦しくはありますが、これが書かれてあってこそ、と云いますか(何を書いているのかなあ、私。うまく伝えられません……)。

それにしても作中のカフカが誰かと交わす会話、特に大島さんなど図書館の人と交わす会話のなんて「小説的」なことか。こんな会話、実際にしてたらカナーリ不自然でわ?(^^;……そう、まるでアングラ。前衛演劇を観ているような感じです。意図したものなんでしょうけど……。ああでも、『スプートニクの恋人』とかよりずっと良いですね。
【3日目】
読了。『ねじまき鳥』では井戸に降りていく象徴的なシーンがありましたが、おそらく心理的に同様の意図をもってこの小説では「森」に深く分け入っていく、というのが描かれていました。また、「ねじまき」でノモンハンの事件をモチーフとして描いていますが、「海辺の」にも日本兵が登場します。「ねじまき」は著者にとって分岐点になったと云われる『アンダーグラウンド』以降の作品ですから、この類似は非常に興味深いですね。

「海辺のカフカ」ってどんな話?と聞かれたら一言で答えるのは難しいですけど、うーん、そうだなあ。主人公は15歳の少年。彼の思春期の葛藤と父親との問題、母親との問題がある意味、ギリシャ神話に沿った「父を殺し、母と交わる」というあの永遠のテーマで描かれています。あと、周りにいろんな不思議な人が登場します。今回、登場人物の名前が「遊んでるの?」というのがいくつか(笑)。ナカタとか、中日ファンのホシノとか、猫探し依頼人のコイズミさんだとか……。遊んでるんでしょうね(^^;。

「海辺のカフカ」は1つの曲のタイトルであり、絵画のモチーフであり、そして主人公の名前が「カフカ」であります。冒頭から出てくる「カラスと呼ばれる少年」という問題もあります。

いろんなテーマが錯綜していますが、要するに「人間と人間の関係」だしやっぱり人にコミットメントしていく方向で描かれていると思います。主人公が15歳の少年ということで、あるいは排他的な話となるのかと思いましたがそうではありませんでした。しかしこの話は「少年」が主人公でないと絶対に成立しないし、「少年」がテーマと云ってもいいのだと思います。つまりこの小説は少年にとってのイニシエーションなのでしょう。上巻のうちは「う~ん?」と思いましたが下巻くらいからこれはこれで良い、と思えるようになりました。