2002/08/09

流星ワゴン

流星ワゴン
重松 清
講談社 2002-02


by G-Tools

■重松清
【1日目】
帰り、地元の本屋で読むものを物色。ふと目に入った重松清の黒い背表紙に呼ばれて手にとった。今年の2月に出たもので、もう6版重ねている。重松清にハズれなし。そして確か、「本の雑誌」の書評でも評判良かったってゆーか大絶賛だったなと思いつつ最初の数行を読んだらあまりにすうーっっと染み込んできたので驚いてしまった。イヤでもこのヒトのって上手いけど悲しかったり苦しかったりするから避けたいってのもちょっとアリなんだけど、と心のどこかで思ったけどこの引力からは逃れられなかった。
 と、いうわけで読書中。ズルズル引き込まれて既に半分くらいだ。なるほどテーマは暗いというか深刻なのだけど、文章のどこかに明るさというか……暖かさがあって、離れられない。さすがだなあ……。少し涙ぐんだりしながら、頁を繰っています。
【2日目】
読了。外で読むと泣くと困るので、帰宅してから読みました。
これはテーマは「家族」。38歳の、リストラされた元会社員が主人公。懸命に努力していた中学受験に失敗し、どんどん内にこもってゆき家庭内暴力を起こすようになってしまった一人息子。「あなたとは暮らせない」と言って泣きながら離婚届に判を捺すよう頭を下げる妻。若い頃からそりが合わず、飛び出してきた実家にいる父親は今、まさに末期ガンで死のうとしているが、そんな憎みつづけている父親の元になけなしの「交通費」をもらうためだけに通っている主人公。――「死んじゃってもいいかなあ、もう。」そんなことをぼんやり考えていた彼の目の前に1台のワゴンが止まる……。
そんな感じで始まる物語。主人公はこの不思議なワゴンの乗客によって過去に遡る。自分の家族が壊れていくのを解かっていて、止められない、また同じ言動をしてしまう自分、あるいは、必死で過去を変えようともがくが結論は同じになってしまう絶望。家族の崩壊を止めたい、息子を救いたい、妻を救いたい、自分も……救われたい。
――日常のほんのささいな、でもリアルな現実を、重松清はきっちり描いてくる。そして甘いおためごかしなんか、この人は書かない。まるでSFのようなワゴン、そしてタイムスリップ。……でも、終結部に至る現実は、非常にリアルである。そして、それだからこその力強さ。

読みながら、涙がいくども流れた。人間は、過去に戻ることはできない。しかし人は時々言うのだ、「あの時に戻ってやりなおせたらなあ」。……その意味を、その重さを、あらためて考えてしまった本でもあった。悲しいけれど、何ともいえない暖かさと力をくれる本である。