2002/08/21

パレード

パレード
吉田 修一
幻冬舎 2002-01


by G-Tools

■吉田修一
【1日目】
読書中。予想通りのおもしろさ。予想外の奇妙な雰囲気でニヤニヤしながら読んでいます。これは、若者が数人同居していてそれぞれをそれぞれの視点から描いていく小説のようなんですけど、そこに人情とか同居時代!ってかんじのしがらみを感じさせないことが今風、なのだろうと思う。まだ途中だから何とも云えないけど……こーゆう雰囲気、好きだなあ~。帯によると山本周五郎称受賞作ってあります。山本周五郎って時代小説家じゃなかったっけ?(あやふや)これは時代物じゃないけど、賞の対象って時代物限定じゃないんだ……よくわからん。ま・いっか。そんで新芥川賞作家の代表作とも書いてある。今調べたらついこの間の受賞だそうです(まだその作品が出版されていない)。ふぅぅぅぅん。とりあえずこの小説の設定は私好みなのだー。気に入ったら他も読もう。
【2日目】
朝の通勤で読了。うーむ、予想してたものとは違ったけど、よかったなあ。昨日も書いたように、これは4人の男女が(途中から5人になる)マンションの1室で同居というか雑居していて、それぞれの章が1人の一人称で綴られている小説なんでありますが。お互い助け合うとか青春だとか分かち合うとかそーゆー、一昔前の涙の感動みたいのは全然なくって。勿論それぞれがそれなりに悩みとか問題があるんだけど、彼らは同居して問題なくやっていくために「距離」を取るし、それぞれが「言いたいこと」じゃなく「言っていいこと」しか言わないという姿勢なのです。作中にも出てきたけれど、一番近いのが「チャット」のような同居。なんていうか、これ10年前には絶対描かれなかった小説だと思うのです。21世紀の、いまだからこそ書かれて、そして「こーゆうの解かる」と思える小説のような気が。
文体とか文章から立ち昇る雰囲気にユーモアもあり、それぞれの登場人物の書かれ方も興味深い。他人の視点から描かれたときと、その人が語り手になったときとの差異もリアリティがある。ちなみに舞台が現代なので、「ナースのお仕事」の再放送だの、「笑っていいとも」だの、実際あるテレビ番組名が会話中にバンバン出てくるのも特徴か。
登場人物の中で一番ズンときたのが最後の伊原直輝視点の章。年齢的に近いこともあり、また彼の思考が非常に興味深かった。しかし、最後にある「事項」について彼は他のみんなが「知ってて黙っている」んだと考えていたが、読みながら、「それはどうかな」と思った。最初から読んできた感じとして、「周りはそこまで踏み込んでいない」とも思える。むしろ、「皆が実は知っている」というのは直輝の「最後に残された希望」なんではないか、あるいは「すがりつく藁」なのではないか――という解釈のほうが残酷ではあるけれども、それのほうがリアルである。ドラマ的には「知ってて黙ってる」方があったかいし、人情だし、感動的だけど、でもそういう甘いものをこの著者は書こうとしたと言えるだろうか?……こればっかりは答えは書いていないので、どう取るかは読み手の自由だと思うけれど。どうでしょうねえ……。
読み終わった後、いろいろ思考の輪の広がる小説だった。感動とかじゃないけど。ちなみにジャンルとしてはミステリーではありません。