2002/07/20

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール
奥田 英朗
文芸春秋 2002-05


by G-Tools

■奥田英朗
【1日目】
まー、こんな駅下の小さい本屋には置いてないだろうけどいちおう、と思って覗いたら、なんとあるではないか、先日私が4軒回って見つからなかった奥田秀朗『イン・ザ・プール』が!ここって以前『事故係生稲昇太の多感』が見つかったところです。ううむ、あなどれん。確かに文庫などの揃え方はダメダメだけど、単行本は使えるかも!狭いけど、置いてある本がなかなかナイス・セレクトということよね。大阪駅のキヨスクの本屋さんです。
というわけで読書中。短篇5つ入っていて、全部ユーモアもので、同じ精神科医がサブキャラで登場するシリーズもの。この著者は今まで犯罪関係の深刻なミステリーばかり書いていたのだが、ユーモアものでも充分力量があることを証明した、みたいなかんじの評判を読んで読みたくなったんである。ちなみにこのHPで『邪魔』を読んで私自身も絶賛している。
まだ一篇と途中。予想していたのと少々方向が違うので戸惑いつつ1話を読み終え、2話目をしばらく読んで「……」。そうか、「精神科医」というものに対する私のイメージとあまりにかけ離れているんだな、となる。ついつい、実はこの行動には裏があるんじゃないか、とか思ってしまうのですが……。うーん、なんだろうこのバカバカしさは(笑)。『邪魔』のイメージとは全然違うなあー。ちなみにこの本、装丁がすごくキレイ。紙のつるつる感とか、こだわって作ってあるなという感じ。内容的には文庫でオッケーかもですけど、この装丁があるから単行本の方がおいしいかも……。
【2日目】
『イン・ザ・プール』読了。……うーん、とりあえず爆笑小説って帯にあるけど、私は全然笑わなかったぞ。むしろけっこー「しみじみ」としたかもしれない。ええと、この本は5篇で成っていて、それぞれ精神科に患者としてくる人を主人公にしてあるのですが。で、症状そのものの設定は「水泳中毒」とか「ケータイ中毒」とかいうまあコミカルなものなのですが。この著者、いい加減な設定で書かない人らしく、そういう症状になった理由をきっちり書いてくれるんですよね、しかもリアリティがあって上手いんです。……で、それがけっこー深刻というか、「わかるわかる」「想像できる、そういう悩み」というものなんですよね。つまりそういう結果として出た症状を笑えるような気分になってなくって(^^;。主人公に同情して、「なんて気の毒なんだ」とハラハラしながら読んでしまう、んであります。――笑えるワケ、ないんですな(^^;。著者の思惑がどうだったのか知りませんが、うーん。

なんていうか重松清を読んでいるのかと錯覚すらした一篇もあり、堅苦しく言うと「現代社会の歪みへの皮肉」がスタート地点じゃないかな、と思える1冊。唯一どこまでもマヌケな道化役として突っ走るのが各短篇に共通して登場する精神科医、伊良部なんである。ちなみにこの医者、太っている設定。……なんか、メジャーの伊良部投手の顔を最初に浮かべてしまったため、それで固定されそうな感じなんですけど(笑)。ははは。まあ、こういうキャラはアクが強いので好き嫌い分かれるんじゃないかと思うんですけど、同キャラでシリーズ化するのかなあ?
結論的にそう悪くない、というか小説としては上手いけど、お笑いではないよん、という感じ。奥田秀朗で薦めるなら『邪魔』の方ですかねえ、やっぱ……。