2002/02/28

無境界の人

無境界の人
森巣 博
集英社 2002-02


by G-Tools

■森巣博
いやあ、すごい面白かった。久々に、どっかに連れていかれそうになる本でしたよ。これ、一応小説なんですけど、限りなく著者の普段考えている「論」の展開された書物だし、たぶんデキゴトも事実に近いんだと思います。いろいろ総合して判断するに。
この本が単行本で出たときに目黒さんのコメントを流し読みして、「ギャンブル」の小説、もしくは「ギャンブラーの論理」がテーマだと思い込んでいたんですけど、読み始めたら「おお、違うのじゃないか!!」。確かに著者はギャンブラーだしそれで生活している人だけど、そして確かにギャンブルのこともいっぱい出てくるけど、テーマはそれじゃないというかそれは単なる横糸でしかないというか。縦糸は、今も巷に氾濫しているうさんくさい「日本人論」を筆頭に事実を捻じ曲げて流布され、学問として成立していたりする「都合のいい論理」を喝破し、「ちゃんと目ェ開けてるか?何が本当のことか、騙されたらあかんねんで」と教えてくれる、まことに親切でおもしろい本だったのだ。しかも、文章の運びというかテンポというか、ロジックが上手いし、難しいことも非常に噛み砕いてわかりやすーく書いてあるので思わず森巣さんの掌の上で転がされてしまいそうになっている自分に気が付いて驚いてしまう、という本なのだ。いや、基本的に流されたからって別に悪くは無いし、どーもしないんだけど、なんて言うか、ここまで巧みに自然に「ひょいっ」と流されてしまう論の力を持った文章に出会ったのなんてまー、ほっとんどないから「なんなんだコレは!?」って警戒してしまうというわけ。すごいなあ。しかも小説としても面白すぎるしテンポのよさも抜群なのだ。
とにかく、いろんな意味で矜持を正したくなる1冊、そして「読んで良かった!!」って思える本。「これを書いた人ってどんな人間なんだ!?」って思ってネットで見たら要領よく紹介されたのを見つけた。うーん、こんな人がいたんだなあ。