2002/02/17

猛スピードで母は

猛スピードで母は
長嶋 有
文芸春秋 2002-02


by G-Tools

■長嶋有
短い話が2本なのであっさり読めてしまいます。
これは初版は1月に出ていたんですね。でも店頭で見かけなかったしネットで2.15発売、とあったのでそうかと思っていたんでした。これは2版目なのです。ふーん。
最初受賞作の同タイトルを読んで。初めての作家さんだったし純文学だし、どんな作風なのかな?とか思いつつ読むのはスリリングでした。タイトルからもっと前衛的なのを想像していたのですが、意外に普通。ちょっとだけファンキーなのかな?(笑)。わりとじっくり読んだのに1時間で読了し、この文章がよかったのとまだこの作家の正体が不明なためにもう1つの「サイドカーに犬」も読んでみたんでした。これもタイトルは変わってるけど、内容はそうでもない。でもやっぱりどっか少しだけネジが飛んでいるのかも知れない。どっちかというとこっちの小説の方が好きかな。しかしこの話に出てくる「洋子」も表題作に出てくる「母」もあんまり好きな人種ではない。サイドカーの母が一番何処にでも居そうな人かも知れない、でも話の中では異質?なのかな……うーん。
総合的に、割と良い感じでした。読みやすい文章だけど、きっとすごく推敲されたものだと思う、洗練されたものだと。村上龍が帯で何か家族とか勇気とか云ってますけど、私は読後これを見て「そんなこと思わなかったけどなー」。まあ龍が嫌いってのもあるけど。芥川賞受賞の理由もそんなこと言ってましたね、誰かが。うーん。
なんていうか、昔から日本人って「まっとうに生きていけばそれなりの幸せはつかめる」っていうのがあると思うんですよ。逆にいえば「線路から外れるとそれはアウトローで苦しむよ」っていう。でも、この小説から感じるのは「世間一般の常識通り生きて、それがどうなの?」ってことだったり。なんて言うんだろう……、やっぱり最終的に個人っていうのはそれぞれ色んなことを考えて生きているわけで、周りから見れば例えばズレていることもある。で、おせっかいにそのズレを周りは直そうとしたり、注意したり、時にはいじめたりしてくる。……つまり自分を曲げないからそれなりに大変なんだけど。でもだからって曲げる必要はないし、っていう。つまり、ラク(楽)な生き方=たの(楽)しい生き方ではない、ってことかしらん。

★追記。
「本の雑誌」4月号を読んでいたら、実に興味深い記事が。先日芥川賞をとった『猛スピードで母は』が2月に出たのをゲットしたら既に第2刷だったと書いたのですが。単に第1刷が少数で、見落としたのかと思っていたんですけど実は違ったのです!!なんと芥川賞受賞前に初版は校了まで済んで帯も作られていたのだけど、出す前に受賞が決まってしまったので発売が延期になり、帯の文句の変更だとかそんなんでドタバタがあって、結果、初版第1刷と第2刷は同時に配本されたそうなのです!!しかも第1刷は数が非常に少なかったため、大型書店でも2冊とかそんなんだったそうで、「あれ?第1刷はどうなったの?」って声があったくらいなんだそう。なるほど~!!そうだったのか!!それで私が手にしたのも第2刷だったのね。……というわけで疑問がすっかり氷解したのでした。いやあ~、こういう記事があるから「本の雑誌」はヤメラレマセン。面白すぎ。
そして、そうです!!もし貴方が『猛スピードで母は』の初版第1刷をお持ちならば、それはまちがいなく、稀少本です。大切に、保存なさることをオススメします。なるほどねえ、しかしこれだけ流通が発達した現代でも事情によってはこーゆうケースで稀少本が出る、ってことがあるんですねぇ~。