2002/01/18

翼はいつまでも

翼はいつまでも
川上 健一
集英社 2001-07


by G-Tools

■川上健一
疲れた頭と目でしかし何もしなければつまらぬことを考えてしまうので帰りの電車で読み始めた。書評誌「本の雑誌」の年間ベスト1に輝いた、北上次郎氏の折り紙付きの作品である。

最初に結論を言うならば、この作品は私にとってはベスト1にはならないものであった。しかしこれを読んで滂沱の涙を流すおじさんがいる、というのは自然に理解できる。なぜならば、非常に陳腐な表現をあえてするならばこれは「かつて少年だったことのある人のための小説」だからだ。しかも今40代~50代のおじさん達が中学生だったころの時代が舞台なのだ。物語全体に流れるビートルズが頭をよぎり、いろいろこみ上げるものがあるとしても全然不思議ではない。泣くだろう。

この種の青春小説に対した場合、どっぷりとハマりこんでしまうか、一歩引いて読んでしまうか、どちらかになると思うのだがこの作品に関しては私は後者だった。運悪く、仕事疲れの日に読んでしまったことも作用しているだろう。特に前半はかなり引いてしまった。しかし折角だからと読み続けてみた。正解だった。主人公が十和田湖に行き、そこでクラスメートの少女と偶然出会ったあたりから、俄然、物語がおもしろくなってきたのだ。なんというか……、今までの、「青臭い少年の大人への不満とそれを表現できない欲求不満」みたいな話から、「少年は少年でいいじゃないか」という空気になったというか。前向き。そう、それ。で、そのきっかけとなった少女、斉藤多恵のさわやかで着実な存在感。「お?」というカンジだった。その勢いで、あっというまにラストまで読んでしまったのだ。

これを、中学生のときに読んだら今と全然違う感想を持ったような気がする。この小説は大部分の大人が「分かってくれない」存在としてあまりにステレオタイプに描かれすぎている。ま・少年の目にはそれが自然なのかも知れないが、大人の視点でこの小説を読むと「そんな一面だけじゃない筈なんだけどなあ」と思ってしまう、で、引いてしまう。だけど作者はそんなことは百も承知でこの小説を書いたのだろう、きっと。ラスト、終章ですっかり大人になった主人公達がかつての教師達と出会う同窓会のシーンを読み終えて、なんだかそう思えた。してやられたのかも知れない。とにかく――、結構醒めた目でこの小説をずっと読んできて、きっとおじさんが泣くであろうシーンもふーん、と読んできた私が、最後の部分を読んで思わず自然に笑ってしまった。いいな、と心から思えてしまった。思った後で、ちょっとくやしくなった。

まあ、そんな小説だったのだ。感動はしない、でもこれはたしかに、イロイロ揺さぶられる小説である。これを読んで泣くか、笑うか、何も感じないか。――それによって、自己分析が出来てしまったりして(笑)。