2019/01/14

『買えない味3 おいしさのタネ』は『今日はぶどうパン』の改題だった…orz

買えない味3 おいしさのタネ (ちくま文庫 ひ 14-4)
平松 洋子
筑摩書房
売り上げランキング: 6,495

先日2019年1月10日に刊行されたちくま文庫『買えない味3 おいしさのタネ』は、2014年11月プレジデント社から刊行された『今日はぶどうパン(既読)を改題したものでした……。
行動範囲にある小さめ書店3つ回って見つからなかったので、仕方なくAmazonでポチッって手元にきた奥付を最初に確認したらそう書いてあって脱力。
「文庫版あとがき」と筑摩書房の編集者による「解説」は載っているが……別に「読めなくてくやしい」というような内容ではない。

Amazonの商品説明にも、ちくま文庫のオンラインの商品説明にもその断りが無いって不親切だなあ!(平松洋子にはこれが多いんだまた。油断してしまった…)

そういえば『買えない味2 はっとする味』『鰻にでもする?』の改題なのでしたが、こちらは『鰻にでも』を未読だったのでノーダメージだったんですが。

詳しくは当ブログ内別記事、※平松洋子著作 改題、増補版などのメモをご参照ください。


今日はぶどうパン
今日はぶどうパン
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平松洋子
プレジデント社
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わるい食べもの

わるい食べもの (単行本)
千早 茜
ホーム社
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■千早茜
本書の初出はホーム社文芸図書WEBサイト「HB」(2017年11月~2018年8月掲載)に「怪鳥のクリスマス」「Mind your own stomach」の書き下ろしを加えて書籍化されたもの、2018年12月10日刊。
装画・挿絵:北澤平祐/装丁:川名潤

この著者の本を読むのは初めて。
いつもきれいな装丁の本を出されるので少し気になっていた作家さんだが、恋愛小説かな? と敬遠していたところ、本書は帯に
「いい食べもの」はもうたくさん。気高い毒気が冴えわたる、異色の食エッセイ
とあって、面白い切り口だなと手に取ってカバー折り返しの略歴を何気なくみたら
1979年北海道生まれ。小学生時代の大半をアフリカで過ごす。
とあり、「なにその変わった経歴! アフリカかあ、良いねえ~」ということで購入決定。
本書の装丁も素敵! ピンクでかわいくて挿絵がちょっと狂気入ってて、カバーを外したら黒ですんごいオシャレ!
本書は著者初めてのエッセイ集ということだ。
いまホームページ見たら、このエッセイシリーズの続きが掲載されていて、おおこれは楽しみ。

面白かった。
「わるい食べもの」というから、もっと「美味しいけど、身体にはあんまり良くない系のジャンクな食べもの」辛いものとか揚げ物系とかについてメインで書かれているのかなと想像していたけど、実際の中身はすごくまともだった。「悪い食べもの」の対極にある「良い食べもの」について追及しようと出掛けたお店で出てきた料理があまりにもマズそうだったのにはびっくりしたけど(たまたま、そういうお店だったのか、メニューから選んでいくスタイルだったので、組み合わせの問題か)。
でも何が驚いて面白かったかというと、著者の考え方とか、あと、食べる量! いっときにどーんと食べるんじゃなくて、延々とずっと食べ続けられるタイプらしい。健啖家だなあ。
甘いものが大好きで、甘いものをたくさん食べられる、でもお酒も大好きなんだそうだ。
苦手なのはコーヒーとビールくらいなのかな?
コーヒーは飲むと胃が痛くなってしまう体質らしい。家族に「なんか気のせいかもしれないがドリップコーヒーとか本格的なのを飲むと胃の調子が悪くなる」という例があって、本当に原因はコーヒーなのかよくわからなかったので、このエッセイを読んで「おおっ」と思った。千早さんのほうが症状はっきりしてるけど。
仕事がらみで人と合うとわりと普通にコーヒーやビールを飲まなければならないシチュエーションになるので、そういうときに困るというエピソードには「確かにそうかも~コーヒーもビールも。大変だなあ」と同情した。

この本を読むと、とりあえず食べものがテーマで、或る一日の食べたものの羅列を読んでいると途中で「えっ…」と絶句する感じだけどまだ終わらない、っていう感じで、同行している編集者などは気分が悪くなって脱落してしまうそうなのだが、いやー羨ましい。美味しいものはたくさん食べたい、けど現実そんなにあれもこれも食べられない。
そして「潔い」のか、そもそも思考回路にそういうものが無いのかは不明だが、本書には一回も、ただの一度も、「太る」からやめておこう、とか「体重が増えた」「太った」などのワードが出てこなかった。もちろん「ダイエット」も「痩せる」「細くなりたい」もだ。「健康診断でひっかかるから」も無い。言葉の問題だけじゃなくて、そういう考えをにおわすもの全体が出てこなかった。
これは、今時の女性にしては珍しいんじゃないのかな?

あれも食べたい、これも食べたい、でも太っちゃうから自制しないと~、と、常に見聞きし自分でも考えているような気がするので、本書を読み終えてそのことに気が付いて「おお」と思った。これ、アフリカ育ちとは関係してるのかないのか知らないけど……。

「共感」について書かれた章もあったけど、本書に書かれていることには上記の様に驚くこともあったけど、基本的に否定的な気持ちになることは無かった。新鮮な驚きとか面白さ、全篇に漂う著者のお人柄やユーモアに微笑みをいただいた。「Mind your own stomach」は特に「そうだ! もっと言ってやれ!」という気持ちに。
酔うとラーメン食べたくなるは「都市伝説」なのかな……? 「リミッター外れる」という意味で「あるかなー」とは思うんだけど、自分がそうなるかどうかは言うほど酔わないのでわからない。

妹さんとは2歳くらいしか離れていないのに、妹さんが赤ちゃん・乳幼児だった時代のことをよく覚えてらっしゃるなあと感心した。もっくもっくと食べていた幼い妹さんが突然ガシャッとご飯の上に顔を伏せて寝てしまう(そして当然食べものが飛び散る)話は何回読んでも可愛くて可笑しくて、大好きだ。頭の中で想像して笑ってしまう。うとうとする、っていうのは見たことあるけど本当に一瞬で電池が切れちゃうんだろうな(笑)。可愛い~。

既婚で、配偶者さんのことを「殿」っていうのも面白い。殿さんはプロの料理人だそうで、ぴったりだとそれだけで思ってしまったが、中身を読んだらもっと深い考え方とか基本的なところでも相性良さそうだった。食べ物に対する考え方とか生活の大事なところだもんなあ。

あと本書で印象に残ったのは習い事の師匠(甘党)と医療事務で病院勤めしていたときのO先生。どちらもとっても個性的で素敵だけど、後者はもしウマが合わない場合はコワい苦手なひとになるかな? 紙一重っぽい。でも裏でごちゃごちゃ言うひとよりこういう「カッ!」と全部出してくれるひとのほうが実は気持ちが良いよね。

2019/01/13

山と山小屋 週末に行きたい17軒

山と山小屋
山と山小屋
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小林 百合子 野川かさね
平凡社
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■小林百合子=文 野川かさね=写真
先日読んだ『山小屋の灯』コンビの2012年5月25日平凡社から出た単行本。
巻末に一部の写真の「写真初出」はあるのだけど、文章は違うのかな、書き下ろし? 写真もほぼこの本が初出みたいだし、そういうことかな。

『山小屋の灯』ではすべての写真1枚に1ページまるまる使われていてなんとも贅沢だったが、本書はそういうページも何ページかあるが、ほとんどはページの上2/5くらいのサイズ、まあ、むしろこっちが普通なんだろうけど。
巻末の【山小屋のデータ】以外は全部カラー写真だし。

野川さんの写真の色というのはなんかごくごく微妙にセピアっぽいというのか、もちろんフルカラーなんだけど、なんか懐かしい色合いで。
「昔のカラー写真みたいな色」というか。
30~40年くらい前のカラー写真を見るとこんな色してたよなあ、っていう。
これは印刷のせいってわけじゃないと思う。
色褪せているわけじゃないんだけど、これってどうなってるのかなあ、写真のことわからないのでこれ以上はなんともいえない。
優しい感じ。
ぱっとみて「鮮やか!」っていうんじゃないのが珍しいなあ、っていう感想。

小林さんが山に登って山小屋に泊まる楽しみを覚えて何年か経って、この「楽しさを伝えたい」という感じで書かれた、「私のお気に入りの山小屋」紹介本。
一度や二度のつきあいじゃない、かなり馴染んだ山小屋ばかり。

タイトルに「週末に行きたい」とあるけれど、文中に週末は混むからできれば平日をおすすめ、と書かれていた宿もあったし、基本的には全部そうだろう。でも「平日に行きたい17軒」じゃ企画が通らない、っていうことだと思う。

本書を読んでいて、山小屋の主、という方々は、なんていうか、みんな何かしら「ひとのために何かすることが苦じゃない」優しさとか、おおらかさとか、器の大きさみたいなのをお持ちなのかな……などと感じた。商売だけじゃやってられない、親切さとか、丁寧さとか。
勿論「商売だから」「プロだから」の矜持がそうさせる、っていうのもあるんだろうけれども。
人間付き合い、客あしらいの難しさとか、客商売全体にいえることなんだろうけれども。
なんかでもそこであえて「山小屋」を選んでいる、っていうのが、山が好きとか、いろんな要素があるんだろうなあ、とか。

アルプスの山小屋で、大学生の若いアルバイトのお兄さんたちがたくさんいるというのが出てきて、ああこういう山小屋もあるんだと。「なんて素晴らしい青春なんだろう」きらきらで眩しい。と同時に、他はあんまりそういうの無くて、ほんとにご家族でやってらっしゃるところが多くて、それだからこその「あたたかさ」みたいなのがあるのかなと思ったり。

最初の話で、小林さんが「家庭的」「アットホーム」という言葉を山小屋にあてはめることについて考察されていて、非常に面白く、興味深く読んだけど、本書全体を通して、「それってどういうことだろう」を具体的に読ませてもらった気がする。

2019/01/08

山小屋の灯

山小屋の灯
山小屋の灯
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小林 百合子
山と渓谷社 (2018-06-18)
売り上げランキング: 158,080
■小林百合子=文 野川かさね=写真
「本の雑誌」2019年1月号の2018年ベストに入っていて、面白そうなので購入。
なんせ推薦者の浜田さんいわく【山界の平松洋子さん】なんだって、へえっ、と、平松洋子ファンとしては大いに興味を引かれ。

想像以上に沢山、ひとつの文章に複数カラー写真という贅沢な構成で、大変目に楽しかった。文章も良い。
「平松洋子」が頭にあって読むと「平松洋子ではないな……」とは思うが(あそこまで凝っていない)、飾り気のない、素直な読みやすい文章で、さもありなん、小林さんの正体は「山と渓谷社」の編集者さんだったのだ(元?なのかな?)。一番最初のエッセイに【当時30歳そこそこだった私は、】とあったので「そもそもこの方おいくつくらいの方?」と思って最後のほうにあった著者略歴を確かめたら【1980年兵庫県生まれ。】とあって、ていうことは2019年現在でもギリギリ30代じゃないかあ。まあ、30なりたてと39歳じゃあだいぶ違う……部分もあるよね、確かに。
ちなみに写真の野川さんは【1977年神奈川県生まれ。】だそう。

最初の話で、著者は1年ぶりの山だといい、その理由として、周りが次々に結婚したり子どもが出来たりしていって【焦りのような嫉妬のような感情】を抱いてしまい、山に行って知り合いに合うとそういう話ばっかりになって、【「後に続かなくちゃね」と、実家かよ的なことを言われる。悪意のない言葉だからこそ、それに過剰に反応する自分がいっそう惨めに思えた。】と打ち明けていて、
「これを1年やそこらで素直に言えるのって凄いなあ」
と思った。変に強がったり、うそぶいたりしていなくて。著者の人柄が最初からすとーんとストレートに伝わってきて、ぐっと引き込まれた。

もっとも、そういう話はこの本ではほとんど出てこなくて、著者の話ではなくてあくまで「山小屋の主人」側が主役というスタイルの本。
どんなひとがどういう気持ちで、どういう経緯で山小屋の主となったか、がメイン。こういうところが【山界の平松洋子さん】☆キラーン なんだろうな。

それは1回や2回の付き合いでは生まれない、もうずっと前から何回も通って、親しくなってる「馴染み」だから見せてもらえる面が大いにあるのだろう。ん? こういうのは内田洋子の面もあるかも。お酒好きみたいだし。しかもこれが町の居酒屋じゃないんだよ、高い山の上にある山小屋の話なんだよ、っていうのがスゴいよなあ~。

登山とは体力と気力がたいへんに要るものだと思っていて、本書で書かれていることも基本的にはそういうことだと思う。なめたらいかん。
ヘタレで運動音痴なわたしはハイキングみたいなのしかしたことないから、山小屋なる存在はまったくの未知の世界だったので、本書を読んで「へえ~山小屋ってご飯が出たりするんだ~」と驚いた、くらい、知らなかった。こういうのが普通なのかな? とりあえず本書に出てくるのはそれぞれの山小屋の方が食事を作られるところが多い(自炊じゃないと駄目なところも出てきたけど、ご主人も交えてみんなで一緒に和気藹々と食事するのでやっぱりこの本書で紹介される系の山小屋だ)。
これがまた、美味しそうなんだー。カレーが多いかな。お酒はほぼ飲めないけど、お酒飲めたらもっと楽しそう~。
山の温泉ネタとかも、さぞや、という感じ。

山登りはまあ体力的に無理だけど、山小屋って良いなあ~、こんな世界があったのか、基本素泊まりみたいな? せいぜいカップ麺とか非常食とか「キャンプ飯」みたいな? のだと思ってたけど、そうじゃないんだな。
しかも山小屋に山登りで行ってるけど「山登り」にあんまり力瘤が入り過ぎていないのが目から鱗!
山小屋で楽しく酒盛りすることがメインだったり、「呑み過ぎちゃったからロープウェーで下山」とか、富士山の山頂まで行かずに七合目で下山(別に惜しがらずに普通に)とか、そういうスタンスが逆に「山に通い慣れてる感」「山なんて日常っしょ」感があって、格好良いなあ~とシビれた。

この本を読んで思った事……人見知りの方にこの空気は無理かもしれない。「人づきあい」に疲れ果てて他人との交流を避けて「山に孤独を求めて登山」タイプにも「イヤ、いまはそういう気分のアレじゃないんで……」と遠慮したくなる空気かもしれない。
でも一方で、
「山の人づきあいは、町の人づきあいと全然違うから、案外陽気にイケちゃうかも?」とも。
ほらっ、山ですれ違ったら知らない人にも朗らかに「こんにちはーっ!」とか言えちゃう魔法(?)があるじゃないですか。
実際、著者も、山小屋での描写の中で「町中だったらしないけど」的な説明を何度かしている。

本書の初出は「ワンダーフォーゲル」連載の「山と山小屋」(2015年10月号~2018年2月号)を大幅に加筆修正したものだそう。
「山小屋奇譚」だけはANAの「翼の王国」(出た!『お弁当の時間』でお馴染みの機内誌)2016年8月号初出。

面白かったので、彼女たちコンビの前作もアマゾンでポチりました。楽しみです。


本の雑誌427号2019年1月号

本の雑誌社
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